性フェロモンとは?

交尾のために自分の居場所を知らせる匂いを性フェロモンと云います。メスが出してオスを呼ぶ性フェロモンが一般的です。
1959年、世界で初めてカイコガの性フェロモンの化学構造が解明されました。それ以降、現在までに1000種を超える性フェロモンや誘引物質が同定されています。これほど多くの研究が行われたのは、殺虫剤に代わる新しい害虫防除に性フェロモンが利用できると多くの研究者が考えたからだと思われます。
性フェロモンが害虫防除にどのように利用できるかを説明する前に、性フェロモンの特徴を述べておきたいと思います。特徴が分かればおのずから使い方も見えてくるからです。

性フェロモンの特徴

細かい点を含めればたくさんの特徴をあげることができますが、害虫防除という観点から性フェロモンの特徴を三つに絞ってみました。それは、「狙った虫に効く」、「微量で効く」、「毒性がほとんど無い」、以上の三点です。

(1)狙った虫に効く
殺虫剤は、一度の散布でアブラムシやイモムシなど様々な害虫を駆除できます。これは大きなメリットですが、反面、カエルやトンボ、それらを餌にする野鳥など、多種多様な生き物に悪影響します。一方、性フェロモンは、組成と比率が微妙に異なる種固有のシグナルであり、狙った虫にしか効きません。蛾の性フェロモンにトンボやカエルが反応することはないのです。この当たり前のことが性フェロモンを害虫防除に用いる場合、殺虫剤との違いを鮮明にしているとても重要な特徴ということができます。

(2)極微量で効く
オスを誘引させるのに必要な性フェロモン量はおおよそ1ナノグラム以下です。ナノグラムという単位は馴染みが無い言葉かもしれません。1グラムの千分の一がミリグラム(mg)、そのまた千分の一がマイクログラム(μg)、さらにその千分の一がナノグラム(ng)です。したがって、1ナノグラムは一円玉(1グラム)の十億分の一となります。イメージが湧かないかもしれません。いずれにしても、性フェロモンは微量で効くという特徴があります。

(3)毒性がほとんど無い
昆虫(特に蛾の)性フェロモンは、毒性がとても低いことが分かっています。カイコガ、チャノコカクモンハマキの性フェロモンとともに、サラダ油であるリノール酸とオレイン酸の化学構造を以下に示します。どちらも炭素が一直線につながり途中に二重結合が入る良く似た構造をしています。構造が似ているからと言って必ずしも毒性が低いとは限りませんが、蛾の性フェロモンの場合、サラダ油の類似物質という理解で毒性に関しては問題がないと思います。 以上の特徴を踏まえたうえで、フェロモンがどのように害虫防除に利用されているかについては、ページをあらためて紹介します。

日本生物防除協議会について

JBCA

日本生物防除協議会(Japan BioControl Association)は、日本微生物防除剤協議会(2006年~)および日本バイオロジカルコントロール協議会(1997年~)の合併により、2016年4月に発足いたしました。 生物農薬(天敵製剤、微生物殺虫剤・殺菌剤)及びフェロモン剤を用いた生物防除技術だけではなく、それらの技術と併用可能な化学農薬を合理的に組み合わせた「IPMプログラム」を確立し普及・啓蒙することで、持続可能な農業生産を支え、日本農業の発展に寄与することを目指します。 ご支援、ご協力いただける会員を募集しておりますので、作物保護製品・技術の製造販売および普及に取り組まれている皆様方におかれましては、ぜひご入会くださいますよう宜しくお願い申し上げます。