第1回 シンポジウム講演より質問と回答を掲載いたしました

「群馬県の露地ナスにおける天敵利用防除体系の現状と展望」
群馬県館林地区農業指導センター  蓼沼  優

アザミウマ類の種類別発生状況(ナスの場合、初期のアザミウマ類(ミナミキイロ以外)の発生は天敵のエサ資源として利用されるため)

ナスおよびマリーゴールドの花で、アザミウマ類の洗い出し調査を実施しました。調査はアルコールの入った瓶にナスまたはマリーゴールドの花を入れ、振とう後濾過してサンプルを回収しました。ナスは各区調査地点3カ所からそれぞれ5花採取し、マリーゴールドは各区ともナスのベット外周から5花を採取しました。 調査の結果、各年度ともナスの花ではヒラズハナアザミウマが最多となりました。またマリーゴールドの花では、はじめはヒラズハナアザミウマが多いですが、梅雨明け後はコスモスアザミウマが増加して最多となりました。
果実を加害するミナミキイロアザミウマは、ナスの花で梅雨明け後散発的に確認されましたが、マリーゴルドでは確認されませんでした(図1,2)。

図1 ナスの花の洗い出し調査結果
(スワルスキー放飼区、1花あたり)
図2 マリーゴールドの花の洗い出し調査結果
(スワルスキー放飼区1花あたり)

ミナミキイロアザミウマの薬剤感受性(ピリダリルの散布回数が多いため)

群馬県ではアザミウマ類の薬剤感受性検定は実施していないため情報がありません。
ナスIPM圃場では特定の薬剤に偏る傾向があるので、今後技術の普及に合わせて薬剤の選定も行う必要があると考えています。

梅雨明けおよび9月以降のヒメハナ密度低下時期のスワルスキー効果の所感
あと、マリーゴールド等のインセクタリープランツはアザミウマ薬剤の影響を受けるため、畝間より、圃場周辺への植栽が一般的かと思います。

3)-1梅雨明けおよび9月以降のヒメハナ低下時期のスワルスキー効果の所感
①梅雨明け:アザミウマ類が抑制されており、ヒメハナの密度が低下してからカブリダニ類が増加するまでの期間も短かいため、アザミウマ類による被害果が増加し問題となることがなかったのではないかと考えています。
 また、粘着トラップ調査の結果、梅雨明け時期にはアザミウマ類成虫の飛来数が低下していたたこともプラスの要因であったと考えています(図3、4)。 ②9月以降:カブリダニ類の個体数が高い間はアザミウマ類の被害も抑制されましたが、10月に入り気温が低下するとカブリダニ類も減少し被害果は徐々に増加するので、その年の気象推移や状況によっては薬剤防除の検討が必要な場合もあると考えています。
3)-2マリーゴ-ルドなどインセクタリープランツの植栽位置について
 基本的に圃場外周への栽植が一般的です。データは取ってありませんが、27年度に圃場外周に定植したマリーゴールド苗をベット肩部分の株間に植えたところ、担当農家から「マリーゴールドの植えてあるベットは、ナスの花に寄生するアザミウマが明らかに少ない」との報告があり、2年目の調査では全てのベットにマリーゴールドの苗を定植することとしました。ご指摘のとおり、ベット上に混植すると薬剤による影響を受けやすくなると思いますが、マリーゴールドを狙って薬剤を散布しなければ、天敵昆虫を温存する効果が全くなくなることはないのではないかと考えています。
 また、群馬県は例年8月前半に連日40℃近い高温が続くため、直射日光を受ける圃場外周のマリーゴールドは枯死しやすく、半日蔭となるベットへの混植もマリーゴールドの花数維持には有効ではないかと考えています。

図3 開花節直下葉の見取り調査結果および
アザミウマ類誘殺結果(H27、青色粘着板)
図4 開花節直下葉の見取り調査結果および
アザミウマ類誘殺結果(H28、青色粘着板)

農家への情報提供の仕方(必ずやること、必ずやってはいけないこと)を知りたい。

現時点では施設ナスの情報を土台に情報提供を行っています。今後、露地ナスとして検証が必要な項目については少しずつ調査検討を行い追加修正を行う予定です。
 天敵の放飼に関連して提供する項目は
①薬剤の影響程度および日数を確認すること
②製剤放飼は害虫密度を極力低下させた状態で行う(ゼロ放飼)
③製剤を中心とした天敵昆虫の活動しやすい圃場管理を行うこと などを中心に提供しています。
 圃場管理に関しては、施設ナスの調査事例をもとに、整枝管理法、放飼後の摘葉開始時期、摘葉後の茎葉処理など、作業の有無と定着状況の比較から明確な差の見られた項目について抜き出しました。これらの項目から「絶対に必要なこと」と「絶対にやってはいけないこと」だけを抽出し、天敵放飼予定日を中心に時系列で整理した作業計画表として配布しています。 別添ファイル参照 [ch0]

講演会・セミナー履歴

日本生物防除協議会について

JBCA

日本生物防除協議会(Japan BioControl Association)は、日本微生物防除剤協議会(2006年~)および日本バイオロジカルコントロール協議会(1997年~)の合併により、2016年4月に発足いたしました。 生物農薬(天敵製剤、微生物殺虫剤・殺菌剤)及びフェロモン剤を用いた生物防除技術だけではなく、それらの技術と併用可能な化学農薬を合理的に組み合わせた「IPMプログラム」を確立し普及・啓蒙することで、持続可能な農業生産を支え、日本農業の発展に寄与することを目指します。 ご支援、ご協力いただける会員を募集しておりますので、作物保護製品・技術の製造販売および普及に取り組まれている皆様方におかれましては、ぜひご入会くださいますよう宜しくお願い申し上げます。